3 : 19 カシミールに核兵器

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アメリカを理解する視点

2001年 9月22日
記事ID d10922d

2001.09.22 米大統領の演説は「世界各国は我々に味方するかテロリストに味方するか決定しなければならない」というちょっと強引な感じのものでした。アメリカの味方をしない者はテロリストの味方とみなし、攻撃するという意味にもなるので‥‥。「絶対正義」である自分たちに味方をしなければ正義の敵=わるものとみなす、という、中間的なものを認めない二分法の考え。オサマ氏について「犯人である証拠は充分」と言っていますが、アフガニスタン政府から「では引き渡すのでその証拠を開示してください」と求められると、「交渉には応じない」とのことでした。引き渡してほしければ、証拠を出したほうが、世界中の国々も納得すると思いますが、捜査上のつごうで、まだ公開できる時期でないとか、あるかもしれませんよね。例えば、だれだれさんも協力したらしいので、いま事情を聞こうとしている、とかの情報が出ると、そのだれだれさんがびっくりして隠れてしまうかもしれないとか。

でも、あんまり、せんそう、せんそうとあおるのも、どうでしょう。あとからアメリカ人もたくさん協力していたことが分かったとき、その人の住む州も、しかえしとして、こわすのでしょうか。そんなわけないと思うけど、犯人がいる場所がきらいな国だったらこわしていいけど、こぶんの国だったらゆるしてあげる、というのも、なんかヘンですね。

アメリカには確かにあおられたかのように闘志まんまんな人もおられますが、米政府のややうわずった「事件利用」の姿勢に疑問を感じ「報復の前に徹底的な調査を。報復よりフェアな判断を」とうったえる人々もおおぜいおられます。あとから間違いでした、では済まされないことですし。すでに、報道の仕方(させかた?)があまり良くなったため、犯人であるかのように名指しされた人の住む地域と同じ地域の出身だというだけで、動揺した市民かららんぼうにあつかわれる、という「二次的」な問題も起きていて、いたたまれなくなります。「事件と事故の両方の線から慎重に捜査を進めます。事件としても現段階では何も断定できません。国民のみなさんは予断をもたず、冷静に調査結果を待って下さい。デマに惑わされないでください。これまでも偶然の事故がびっくりするほど立て続けに起きたケースもあるのです」とでも言ってとりあえず自分の国のひとびとを安心させる、ということを考えていれば、またずいぶん違った結果になったのですが。だって、**人がやったらしいよとかのデマが流れて、いじめとかになったらかわいそうじゃないですか。本当に**人(実際にはサウディアラビア人のオサマ氏が疑われてるわけですが)がやったこととしても、同じサウディの人だっていうだけで、わるいなんてこと、ぜんぜんないんですから。

見るところ、今回の米政府のスタンスは、かねてからの中央アジアへの進出計画を進めるのに利用するということのほか(もちろん、オサマも除去したいでしょうけど、それは「ついで」みたい)、あんがいアメリカ自身の良心のいたみも、あるのかもしれません――二次大戦後の、数え上げればきりのない、世界中でやってきたいろいろなコトに対する罪の意識みたいなものが重くのしかかってきて、世界から仕返しされるのではないか、という危機感もあるのかも。そう考えると、鼻息あらい大統領をみて、直感的に「何かおかしい」(戦いの魔にでもとりつかれたの?)と疑惑を感じているかたがたも、「これは、むしろ人間的なこころの反応なのだ」と納得できるのでは、ないでしょうか。人をいっぱい踏みつけてきた人が悪夢をみたり、人を踏み台にすることについて自分は何も感じないわけでなく、やっぱりホントは心が痛む――というようなストーリーがあると思うのですが、もし仮に(あくまで仮定)そういう感じだとするなら、政治家たちは、本当はあんがい優しいせんさいな心根を持っているのかもしれませんね。それに、自分のメリットもあったかもしれないけど、結局は、自国民に良かれと思って、自国の繁栄のためと思って、あえて難しいこともやってきた、そのこころの痛みだとしたら、アメリカの政治家さんたちのことを、あまり責められないのでは、ないでしょうか。

さきの世界たいせんでかった国ですので、ちょっぴり自信過剰ぎみなのも、やむないことと思います。

けれど、国境のないインターネットの時代、アメリカの人々も、教科書が教えてくれないことを、自分で調べて、自分たちが本当は、どう思われているのか理解するように、これを機会に、こころのもやもやを「学習」「研究」に昇華させては、いかがでしょう。自分が知らないことについて言われると「ウソをつかれてる、つみをきせられてる」みたいに思ってふゆかいになりますもの。ご承知のように、日本以外のたいていの国(とくにはアメリカ)では、たとえば広島のことは、あんまりひがいもなくて、民間人もさほど巻き込んでいないし平和の実現にとても役だった良いことだった、というふうに習います。この見方は自分はよく分かるのですが、日本地域のひとびとは、もう少し違った感じ方をしてると思います。また、決してアメリカ人のひとりひとりがわるいということはないですし、むしろぜんぜん知らなくてびっくりして、とまどってしまうと思うのですが、アメリカがぐんたいをはけんした国々は、どこも、だいたい、あまりうれしくないめにあっています。これは、ばつを与えるために行ったところは当然として、平和や秩序のためにということで行ったところでも、たいへんなことなんです。

ですから、アメリカだい好き!なかた、またアメリカに好意をいだいていたいかたは、そうした現実を見つめて、そこを直視したうえで、なおアメリカの良さを分かるようにすることがたいせつです。やったことを、そんなことうそだ、と目をそらして、話も聞かないようでは、いつまでももやもやを乗り越えられないからです。

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「印パ核保有OK」へ政策転換:米

2001年 9月22日
記事ID d10922

WIRE: 09/21/2001 8:31 am ET U.S. to Lift Nuclear Sanctions on Pakistan, India イスラマバード発ロイター。アフガン侵攻に協力すれば経済的にもいい話がありますよ、とパキスタンにもちかけていたアメリカですが、1998年の核実験を非難してインドとパキスタンに課した制裁措置を近く解除する見通しです。以上を西側外交筋高官が金曜日に明らかにしました。

アメリカは、さらに、パキスタンの負債の返済計画についても、もっとゆっくりでいいよ、と緩和の見直しをする予定。

制裁の解除によって、インドとパキスタンは世界のエリートである核保有国の仲間入りをすることができ、見返りとして、アメリカは、多国間の協力や直接の援助を得られるものと見ています。

ただし、1999年のムシャラフ政権発足への非難としてアメリカがパキスタンに課した追加制裁は、解除しないとのこと。

「すぐに大きく動くでしょう」この外交官は、匿名を条件に明かしてくれました。「ワシントンでは対印パ制裁解除の準備が進んでいます」

ほかの外交筋も「こうしたことは、アメリカに協力することで約束されるたくさんの恩恵のひとつにすぎません」と述べた。

ムシャラフ大統領は、パキスタン国内での激しい批判にもかかわらず、9月11日のハイジャック事件の対応について、アメリカに協力して侵攻の足場を与えると約束しています。

仮にそうした同盟が可能でも、勝ってしまえば、獲物の利権の分け前をめぐって争いで内輪もめするのが歴史の定石。目先の利益のためなら、核兵器でも何でも渡して仲間にするけれど、のちの印パ戦争など、だいじょうぶなのでしょうか。
「きみ、インドとパキスタンは、セーターをめぐって争っているのかね」
「は? ――だ、大統領閣下、カシミールは地名であります!」
「ふうむ、どのへんにあるんだったっけ」
「北部アフガニスタンと接しております、閣下」
「ということは、今回の勝利で我々が国境を引き直せば良いわけだ、我々平和の同盟軍で仲良く平和的に!」
「さぞや盛り上がりましょう」

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[af]金曜日の祈り

2001年 9月22日
記事ID d10922c

テロ支援国家どころか、世界で最も切実にひしひしと身にしみて平和を希求しているのは、二十年以上にわたる内戦(それも国内問題というより諸外国の利権争いによる)にさいなまれ、なぶられつづけてるアフガニスタン国民だ。「アメリカは、そのごり押しをもういい加減にしてください。お願いです。わたしのような若いのが、また銃をとらなければいけないのですか」

アメリカが攻撃目標と称しているのは、決して強大な軍事国家などでは、ない。首都カブールですら、長引かされた内戦で、がたがたなのだ(写真)。

金曜日の祈りで、ムッラたちは、「もし世界最高の近代装備をほこる米軍に攻め込まれたら、われわれは男も女もゼロに近い軍備で戦わなければならない。だがこのようなことに屈するわけには、いかない」として、各地の住民に忠誠を求めた。

「オレは戦うぞ。本気だ」参列したひとりの男性がつぶやいた。「でもタリブたちやオサマを守るためではない。文化と国土を守るためだ!」

「最後の一滴の血が流れるまで、我々は戦いぬく」と、あるカブールの住民。

「ああ偉大なるかなアラー、偉大なるかなアラー」静かな、悲痛な、ほかにすがるものもない、ちいさなものたちの、金曜日の祈り。内戦でぼろぼろになっている首都カブールにかろうじて立つモスク。全員虐殺されるかもしれない。まるで無関係の遠い海のかなたのハイジャック事件。なんたる不条理。なんたる桎梏(しっこく)。

ブッシュ大統領は言う。「我々がかきあつめたすべての状況証拠は、ビン・ラディンの組織に責任があると示している。そして、そのような組織に属するラディンを滞在させた国は同罪である。殺人者である」

この弁舌でいくと、対決は避けられないように見える。

「不条理な抑圧に対する聖戦こそ、イスラムの魂。死は、いつであれ、神が望まれたときに訪れる。どんな卑劣な手で来ても魂だけは売れない。信仰のために死を選ぶ、これほどの名誉があろうか」モハンメド・ムスリム・ハッカーニ文部大臣代理がモスクで呼びかけた。見ようによっては「狂信的」だが、実情は「悲壮な覚悟」だろう。そんなことで勝てるなんて、誰も思ってない。それは分かっている。

19世紀にはイギリス、20世紀にはソ連の侵略を受け、それらを追い出したアフガニスタン国民ではあるが、今度だけは自信まんまんとは言えない。「アメリカは、きつい敵だ」タリブたちも住民らに警告している。「ほとんど白兵戦しかできない我々には想像もつかないほどすごい装備らしい。見たこともない不思議な兵器――だが――やるしかない」

在パキスタン・アフガン大使も言う。「暴力には屈さない。決して」

仮にラディン氏が――西側報道では現在、北部山岳地帯に潜伏しているということになっているが――実際にアフガンから出国したとしても、新たな住まいを見つけるのは困難だ。第三国で「イスラム法による裁判を受けさせる」という話ですら、アメリカとの摩擦を懸念し、しりごみするほど。ましてや「ひそかに住まわせた」と分かれば、予告なしにたちまち巡航ミサイルを撃ち込まれる危険を覚悟しなければならない。しかし、これが「政策や考え方の点でアメリカを支持しているからどこもラディン氏を見放している」ということを意味するかどうかは微妙だ。「報復」と称するアメリカの無差別攻撃(スーダンやアフガニスタンで無関係の市民が死傷したモニカ・ミサイルのたぐい。あるいは先日の突然のイラク空爆とか)がどんな恐怖であるか、西側では、ほとんど報道されないにしても、怖くて言いたいことも自由に言えないのかもしれない――自国内のとりしまりが、あるいはアメリカが。

アジア地域のほかの国でも、「こんなことを言うと反米的と思われて叱られるかもしれない」という無意識が言論に影を落としているという。その地域では、いちいち「今回の事件の被害者には心から哀悼の」だの「まずテロは絶対に許せません。テロを認めるわけではありません。しかし」などと最初に思いやり枕を置かないと意見も言えないという。弱いアラブ圏がのきなみ強い姿勢で米に同調しているのも同じしくみだろう。これらの人々は民族の誇りを力説するが、内心アラブないしアジアであることを恥じているようにも見える。いくつかの国では、もう少し自分の意見を明確に言える――反米的だかどうだか知らないが、対等な友人であるための前提だ。

アラブ圏のサイトなどでよくでる「どっちがテロリストだよ」ねたは、アラブ側の視点に立てば明白なことで、「なぜ国際社会は一国のこんな横暴をゆるしているのですか」ということは、イスラム圏以外でも言う人は言っているのだが、「アメリカ」が価値観のものさしになっているので、「反米的である。ゆえにわるい。証明おわり」で片づけられてしまうだろう。反米のための反米ではないのだが。実際、反米的だ親米的だ、とこだわる人間も、反ロ的だ、親ロ的だ、というカテゴライズは気にしない。「アメリカ」は無意識に重くのしかかる執着でありつづけるだろう――その正しさは絶対の「正しさ」でないという事実を彼我が直視する日が来ない限り。

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日本が二次大戦に勝ってたら――

2001年 9月22日
記事ID d10922b

多くの人々は、国連安保理の「五大国」の意思に国連が逆らえないことについて「二次大戦に勝った官軍やから、しょーないでしょ」とあきらめぎみかもしれない。あえて言えば、こうして微苦笑する側にいられたのが、せめてもの救いかもしれない。もし日本が勝っていたら?

そうだとしたら、日本がやってきたすべては大義のため、大東亜共栄圏は正義で「中韓東南アジアよ、おまえらは、おれたちが守ってやってるんだ、感謝しろ」、アメリカは悪、へいこら揉み手して俺様の機嫌をうかがってろ、という歴史観が世界の「常識」ということになっていただろう。自分たちは「世界の正義」だと信じ、またそう見られていると信じているが、じつは世界中の残りのすべての国から――表面的には怒らせると怖いと思ってニコニコしているが――かげでひんしゅくを買ってる。この構図を思えば、ある意味、日本が敗戦し、日本人の意識に複雑な陰影が生じたことも、「人の痛みが分かる」「単純でなく繊細微妙な感受性」といった点で、良かったのかもしれない。かえって日本古来の文化が(戦時中の暫定的な再解釈から解放され)守られた面もあるのかもしれない。負けて守れたとは不思議だが、勝っていれば、今ごろ世界中に日本語をはんらんさせ、ハワイの在米皇軍基地で日本兵が現地の少女に乱暴し、しかし裁判は受けないで良し。というような状態でふんぞり返り、思いやり予算をぶんだくり、「世界中はみんなおれたちが正しいって認めてるんだぜ。世界秩序だ。大地球共栄圏だ。ん、君らの田舎方言でいうとグローバリゼーションだよ、日本語じゃわからんかい? 日本語が分からないなんて国際社会じゃダメなんだよ、お前の国の政府は日本語教育をもっとちゃんとやれ、このシロめ」「し、シロは美しい色です。ホワイト・イズ・ビューティフル。白人を抑圧するのは、やめてください」「抑圧なんてしてませんよ。みんな平等です。――だろっ!」

そして‥‥「さて。今週の制裁を発表します。我々が調査したところでは、次の国は民族を抑圧する悪として、我らの清めに浴する栄誉を得た。聞け!――」(世界一同なまつばごくり冷や汗たらあ)

そんなことを繰り返すうち、とつぜん、東京都庁に――(以下略)。このたとえで、イスラム圏に決してないわけではない「あーあ、誰だ、気持ちは分かるが怒らせると何するかわからんぞ。ま、やられるのは自業自得だが」という気分が伝わるだろうか。決してパレスティナだけの話でない。テロリズムという行動様式そのものを賛美しているわけでもないし、宗教の対立ですらない。もっとシンプルな話だ。たまたま食い物にされてきたのがイスラム教徒が多い地域だっただけ。

態度はでかくても、「オレたちは何もしなくても絶対、勝つ、絶対、負けない」という、のほほんとした無意識があるので、ゴムボートに軍艦をやられるのかもしれない。「勝って兜の緒を締めよ」、勝つということは油断ならないことであり、往々、不均衡のアンバランスを生じさせる。去年のコールへの特攻テロの犠牲者は二桁程度、アメリカ国内でも「薄汚い狂ったネズミにやられた」と納得できた。今回は3桁か4桁程度、価値観が揺れている。南京大虐殺の被害者数を多めに発表したがる被害当事国と同じロジックにおちいっている。強さを誇示するはずが、同情、あわれみに訴えている。単純計算で推測すると、目をつりあげて報復すれば、来年は6桁? んー。それくらいやられて初めて我に返るのかも。テロリスト呼ばわりするその相手は、生まれつきテロ遺伝子を持っているわけじゃあるまい。なぜうらまれるのか。論理的であろうとして、わからないことは宗教のせいにする。わたしたちは何もしてません。連中が宗教上の理由でやってるのです。と。

世界各国の人々が遠回しに「the long-term result would only be more violence」(イタリア)、「to bring itself on the brink of the final World War」(ドイツ)、「The American people should look at this incident from different angles before agreeing on what should be done」(シンガポール)などと言い、「The question that should be asked and is not is: "Why does this happen only to the US? ...」なんて書き込みを見つけて思わずみんな吹き出すのがお分かりだろうか。ちまたのカテゴライズに従うなら、こうして「反米的」と言われるような意見を言っている者だけが、本当の意味で親米家なのだ。そして、「I am truly amazed at the number of Europeans arguing for pacifism in the face of the current attacks on the US.」なんて、きょとんとしてるアメリカのひと(全員でなくあくまで一部。アメリカ市民にもこの点を指摘する声は強い)に対して、「どう説明したものやら。べつに平和主義だからとか、戦争は悪いとか、そんな話じゃないんだけどな。まーいくら言ってもムダだろうなー。負けることを知らないのは悲しい。一面的で単純二分法な、薄っぺらの価値観。金のメッキの正義」などとひそかに考え「だから精神分析があんなに流行ってるのかな」などと余計なお世話な連想をしてみたりもする。

アメリカ大統領の「With us, or with the terrorists」が、アメリカ世論の勘違いぶりを如実に表している。「我々正義のアメリカにつくか、それともテロリストにつくのか」というひどいロジックの押しつけ。

だが、一部のアメリカ人が「本気」で「議論の必要などない」「わたしは軍に志願した。それが答えだ」「正義は勝つ」などと肩をいからせているのは、決してアメリカ政府のスタンスとイコールではなく、政府は、この空気を利用して中央アジアの権益を確保しようと冷徹にあらゆるパラメータを計算しているであろう。とは言え、優等生な子どもが、「原爆は少ない被害で尊い平和をもたらしました。次に我々は世界秩序をきずくためソ連と戦いました。ソ連は間違っていたので滅びました。さらに我々の正義を、ソ連の抑圧から解放された世界全体に広めます。これがグローバリゼーションです」などと暗誦するのを見ると、ついニコニコ「いい子だね」と思うのかもしれない。自滅への道を暴走していることを忘れ。

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[af]オサマねた

2001年 9月22日
記事ID d10922a

アフガニスタンの首都カブールからのロイター伝(Afghans Bitter About U.S. Rejection of Compromise)によると、アメリカから「滞在中のサウディアラビア人、オサマ・ビン・ラディン氏を引き渡せ。さもなければ侵攻する」との最後通告を受けていたアフガニスタン政府ですが、聖職者ら千人が木曜日にラディン氏の出国をうながす宗教的決定(ファトワ)を出しました。アフガン政府は金曜、「出国命令」を承認することはこばみ、「ラディン氏しだいである(勧告はするが、命令はできない)」との立場を示しました。

「証拠もなしに引き渡しに応じるわけにはいかない」と在パキスタン・アフガン大使。「木曜に聖職者らが出した勧告は、提案であって決定ではない」

アメリカは、ラディン氏を、9月11日のハイジャック事件の主犯格の容疑者だとして指名手配しています。――ここで解説ですが、捜査機関内部では、実行犯の特定すら混乱しているもようです。が、すでにお伝えしたように、ラディン氏引き渡しが口実にすぎないことは、米政府も米側軍事専門家も事実上、認めており、単に世論が納得する構図があれば良いということのようです。洗脳済みの大衆ですから、画をみせて「ラディンがやった」「ひきわたさない」「だから軍事攻撃」で充分、納得するでしょう。でも、アメリカ国民についてどうか失望しないでください。じつは、アメリカ国内でも、「まとも」な見方をする有識者がたくさんいます。Wiredも、『ニューヨーク・タイムズ』紙などは、血に飢えた、戦争を扇動する意見でいっぱいだが、一般市民たちは、オンラインに集い、幅広い考えを表明している。と指摘しているように、マスコミレイヤで伝わってくる「世論調査」と、ナマの現地の声は、だいぶ違います。

ヨーロッパもそうです。「国をあげてどこそこも米に協力」とか言ってますが、直接、のぞいてみてください。その国の板を。笑えます。てかアメリカ、笑われてます。リーク情報をまにうけて「犯人は○○決定」と言われたことを繰り返すしかノウがない人々もおられるかもしれませんが、それはそれ、くちをつくのは「against who?」

前回(2000年)のイージス艦コール爆破のときも米側は、アフガン侵攻を実行ぎりぎりのところまでやりかけてました。あのときも多くの死者が出て切迫してましたが、ゴムボートの特攻で「鉄壁の」イージス艦が沈没しかかったのが世界から注目されるのもアレなので思いとどまったのかもしれません。軍事マニア方面には、当然、リッポルド艦長あほすぎ、という見方も多いに出てました。また、コール爆破のときは、まじめに捜査してたのですが、ラディン氏に結びつく証拠を結局、出せなかったということもあります。今回は人々が動揺してるので、もう証拠なんてなくても行けるでしょう、と米側軍事専門家も。コールは外国であったことなので、イエメン政府が直接、捜査を進めることになって、「証拠が見つかったよん♪」が簡単に出来なかったけれど、今回は米国内なので、まぁ何でも。

さて、アフガンからの情報は錯綜していますが、政府内にいろいろと分裂があるのではないか、との未確認情報も出ています。一方は(アメリカ国内の)裁判官らが「いま我が国民は判断停止状態だ」として陪審員制の裁判を延期するほどの揺れ、他方はやられたらとんでもないことで当然、激しい混乱、ですので、アメリカ発、アフガン発の情報や主張は、通常より低い信頼度とみるべきです。当初、アフガン政府のトップであるオマル師は聖職者らの進言にしたがうので、ラディン氏は国外退去処分との見方(というより期待感でしょう)がありました。現状では、どうも不確実です。

しかし、ラディン氏に対して、こうした「ファトワ」が出るのは、もうアフガンのここ数年からみると、異常なほどの譲歩であり(まあアメリカ側の要求が異常なわけですが)、そのおかげで、歴史の視点からは「ラディン氏ラディン氏」とアメリカが言い続けたのは、やっぱり口実がメインだったか、という構造が明確に見通せるようになりました。これまでもそうだろうと考えられていたものの、本当にラディン氏がすごいちからを持っていてアメリカをおびやかしている面もけっこう大きいのかな、というのもありました。今は、米側専門筋が「政府はラディン氏には興味ない」とつい漏らしてしまって、ワッチ系としては、にやりでしょう。

「出国勧告」は「ついにこんな日がね〜」といういささかの驚きを禁じ得ませんが、アメリカは何でもないことのように「そんなんじゃダメ。ついでにタリバン政府の上の連中もみんな出ろ」と譲歩すればするほど、次々いんねんを増大させるという、よくあるパターンに入ってます。要するに「初めに進軍ありき。あとから理由」という感じ。どけざして謝ろうがだめでしょう。経済的に占領させない限り。歴史としてみると「迷場面」ですが、同時代としてみると笑ってばかりもいられません。「テロは絶対に許さない」と言い張っているアメリカ、しかるにアフガンからのあれこれの申し出、譲歩に対し「話しあいの余地はない。こちらの命令を聞くか聞かないかイエスかノーか。いやなら、これだ」と暴力原理主義全開で、そこだけ見てると楽しくても、無差別攻撃の危機に直面している現地の普通市民の視点に立つと、とんでもないことと言わざるを得ません。筆舌に尽くしがたい不条理と苦痛です。

アフガニスタンの現地の声――「政府やオサマを積極的には支持しない。が、(証拠もなく客人に退去を勧める)これほどの決定が出ても、なお一歩もゆずらないのをみると、『強大な力を背景にとにかくイスラム圏を叩きたいのだ』というタリブたちの主張のほうが正しいとしか思えません」(アフガニスタンで「ふつう」とされる文化的規範では、客には親切にしなければならない。客に失礼を働くことは、ものすごく恥ずかしい。という価値観だという。無茶を承知で日本の文化コードに強引に翻訳すると、例えばある大企業の中年の男性社員に対して、規制官庁が「あすから鈴木くんは女装で出勤すること。さもなければ会社をつぶす」と通告し、「交渉には応じないイエスかノーかだ」とすごむので、やむなく社長が「命令はしないが、ああおっしゃっているから、女装を勧告します。でも命令じゃないですよ」‥‥みたいな?)

まあ、あんまり言いたい放題、書いていると、またぞろタリブ萌えな人にも、ムジャヒド萌えな人にもにらまれそうだが、そんなふうにどちらかに執着がある連中が核心をつけるわけない。現地滞在経験が長く個人的に親しい人がいたりすると、偏りがちでしょう。ともあれ、こんなに異例とも言える譲歩をしているのに、どこまでごりごり押してくるのか、と、もとは親米家が多かったアフガニスタンでも、少なからず不愉快に思うかたもおられるようです。上のたとえで行けば、やれというから女装もしたし裸踊りもしたのに、「だめじゃだめじゃ、余は満足せぬぞ」と横柄にぽこぽこ叩かれた感じでしょうか。

どの国や地域にも――日本の米や捕鯨のように――ゆずりがたい一線があるようです。

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きょうの栞(しおり)

2001年 9月18日
記事ID d10918

memo

2001.09.18 ラディン氏引き渡すか今日決定か: Taleban to decide Bin Laden fate BBC News 日本時間01:28発: アフガン政府首脳オマル師は、パキスタンのAbdul Sattar 外相と会談。外相は「時間が差し迫っている。最後通告や宣戦布告などはないだろうが、もう時間切れだ」として、ラディン氏をアメリカに引き渡すよう、うながした。これをうけてオマル師は、ラディン氏をアメリカに引き渡すかどうか日本時間のきょう(18日)アフガニスタン政府内で決定すると発表。※もし仮にラディン氏がアメリカに引き渡されると、アメリカは軍事介入の口実を失ってしまう。いざ引き渡すと言われたときアメリカはどのようにそれを拒否するのか、あるいは口実のラディン氏が現に引き渡されても何らかの理由をつけて侵攻をするのか、動向が注目される。(2:20)

2001.09.17 Bush ponders hits on terror chiefs BBC日本時間21:25発: アメリカは他国政府首脳(複数)の暗殺も検討。――「米国政府関係者が海外要人を殺すことを禁止したフォード大統領の決定(1976)の見直しを含め、あらゆることを再検討する」とパウエル国務長官。アメリカでは、暗殺は、議会の承認なしに大統領の判断のみで可能。今回の件では「60か国が報復戦争の対象となりうる」としている。

2001.09.18 ノリノリ「系」と愉快な仲間たち:「インド系住民」「アルバニア系住民」「中国系住民」「レバノン系住民」‥‥フン、おまえ日本系だろ? 猛毒を撒き散らすような日本系住民の言うことなんか、聴く耳持たないね!「日本系だもんなアイツ〜。日本系ってカミカゼ・テロ精神だから怖いよ。やられる前に皆殺しにしたほうが世界平和のためだね>日本系」

2001.09.17 テロ組織とどう戦うのか 米軍事専門家に聞く――

「ラディン氏の居場所を特定できるのか」→「アフガンへの全面的な攻撃を行えば、見つけ出せるだろう」。ラディン氏ひとりを叩くために、日本より広いアフガン全土を火の海にするのが正義の戦いと言えるのかどうか。「ところで、ラディン氏は本当にアフガンにいるのですか」→「そう信じられているが、1人の人間の居場所を特定するのは難しい」。すべて焼き払ってみたら、どこにもいませんでした。さあ、次は、どの国を焼け野原にしようかな。うふ。

そもそも「ラディン氏が首謀者だ」という宣伝がいつのまにか既成事実化している。そういうことにしておきたい真意は分かるが、「政府発表」だけで、ころりと全面的に信じてしまう人々の精神構造は理解できない――これまであんなに何度も何度もだまされてきながら――。

2001.09.17 BBC 日本時間00:47発: America widens its war targets:「テロリストに安全な居場所を与えるような国は、どこであれ、米軍の逆鱗(げきりん)に触れることになるであろう。60か国が対象となる可能性がある」とラムズフェルド国防長官。約200ある世界の国々のうちの60もの国が、アメリカの軍事攻撃の対象になる可能性があるという。→ 日本語対訳

"There is no pleasure in life anyway, so I don't care if the bombs come and I have to die along with my children," said Leilama, a 38-year-old mother of six in Kabul. "But the United States should know that the Afghan people are not their enemies."

「(二十年に渡る内戦、異常気象、米ロのごり押し制裁による貧困等で)どっちにしても生きていてもつらいことばかり。だから爆弾が降ってきて子どもたちといっしょに死ぬハメになったとしても、かまわない。」レイラマさんは言う。アフガニスタンの首都カブールに住む。6人の子の母親だ。「でもね、アメリカの皆さんに、ひとつだけ知ってほしい――アフガン人がやったことじゃないんですよ」

From Las Vegas SUN: Fearing Strike, Afghans Flee Kabul

2001.09.16 Global message of caution for Bush(ブッシュは慎重に対応してほしいと世界各地から) BBC News 日本時間 9月16日22:59発。――全文・日本語対訳。アメリカの武力行使の是非について、イタリア、ドイツ、アメリカ、オーストラリア、シンガポール、エジプト、パキスタンの見方。

もう少し詳しく――「アフガニスタン: 縛られた手の祈り」

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