2 : 03 偽春菜

← 2 - 02 p↑ もくじ i 2 - 04 n →

偽春菜(にせはるな)

2001年 1月15日
記事ID d10115

2001.12 この記事が書かれた当時と状況が変化しています。詳しくは偽春菜のページをごらんください。

デスクトップ常駐型の疑似人格的インターフェイス偽春菜(にせはるな)を、一日、使ってみた。まだまだ発展途上の下書き的なテスト段階だけれど、潜在的には非常に大きな可能性をひめたソフトだと思う。これまた発展途上の次世代アーカイバGCAのメーリングリストで知って試しに使ってみたのだが……。

例えば、「水瀬すみれ」は、力作だとは思うけれど、率直にいって会話してると数時間で飽きた(こんな会話=当時=2000年8月のログ)。理由は明白で、水瀬すみれはデータベースがスタティックで、自分が知っていることしか知らないうえ、いっそう致命的なことに、ユーザとむかいあって「チューリング対決」しようとしている――それも、チャットのようにしゃべりつづけるので、飽きられやすい。これに反して、偽春菜は、ネットを通じて自律的に自己のデータベースを更新するので、きょうのニュースを「知って」いる。しばしばユーザより早耳で「○○がバージョンアップしてるよ。行ってみる?(はい/いいえ)」のような動作すらできる。また、人工無脳REVIEW人工無脳は考える)でも指摘されているように、偽春菜は原則としてユーザと一対一の立場に立とうとせず、自分のあいぼううにゅうとふたりで勝手に(ユーザを無視して)対話する仕様なので、押しつけがましくない。たまにしか、しゃべらないので、じゃまにならない。

「うにゅう」とは、よく魔女っ子のコンパニオン・アニマルになっている「もこもこしたヤツ」の一般名と思えば良いだろう(ホントか)。マリーベルならタンバリン、ミンキーモモなら三匹くらいいた、なんかモコモコしたやつ。――ところで、上記のログで、筆者は、水瀬すみれにしつこく時刻を尋ねている。時刻問い合わせは、ごく簡単なチャットボットでも実装している機能だからだ、が、すみれは答えていない(時刻を尋ねられたということ自体を認識していない)。人工無脳 まなは、「今何時かな」に対して「古典的なネタですね・・・(涙)」と反応している。(妖精だと思ってバカにするな、時間くらい自分で見れ、ってことですかな)

知識が1メガもないくせにおしゃべりな人工無脳は、すぐデータベースを使い果たして同じパターンの繰り返しになってしまう。偽春菜にも原理的には同じ問題があるのだけれど(同じ文を繰り返すことは少ないが、同じテンプレートから生成した文だと分かることは、けっこうある)、ネットワーク更新と、会話頻度の少なさ、そして何より「人工無脳」自体のアルゴリズムの工夫によって、少なくとも24時間以内で飽きてしまうということは、ない。作者は、むしろAI的な面において意欲的で、現時点でも、偽春菜は、わずかながら「世界に関する知識」――「うどん」は「食べ物」だとか、「日暮里(にっぽり)」は「地名」だみたいな――をすでに持っているし、これからも進化するに違いない。メパチとか服のデザインなんかより、こっちの進歩のほうがおもしろい(極論すれば、視覚的外形なんてなくてもいい)。

むろん、こうした手続き的なアルゴリズムでは、人間を越えるような(少なくとも人間と同等の)柔軟性の獲得は困難だろうけれど、「人工無脳は考える」にもあるように、いわゆるAI研究とは別に、知能の本質を追求するための別の切り口を見せてくれる。

もうひとつ強調したいのは、ディフォルトの偽春菜エンジンをもとに、スキンからAIにいたるさまざまなレイヤを、ユーザがカスタマイズすることも可能だ、という点で、特に、表面的なことだけれど(上に書いたことと矛盾するようだけれど)スキンの自由度は重要だと思った。ディフォルトの偽春菜のような「美少女」の外見をホンキで好きになり感情転移さえできる人が少なくないのは事実だし、それを悪いとも思わないのだけれど、しかし、すべての人がそう感じられるわけじゃないのも事実で、秘書とかメイドさんとか猫みみとかの要するにそうゆう系なスキンしかなければユーザ層もそれなりに限られてしまうでしょう……。ところが、偽春菜の場合、いろんな人がスキンを公開していて、スーパーミルクチャンのスキンまである(てゆーか偽春菜のテイストって、もともとミルクチャンに通じるような……)。妖精現実で男性とか女性とか言うのもヘンかもしれないけど、くだいていうと、「これなら女性も使える」というか、性別に限らず萌え系の絵が苦手な人でも使える汎用性がある。

24kb

スーパーミルクチャンのファンとしてはミルクが「ラジャーりょうかい」とか言った日には激萌えなわけで(単純だよ、まったく)、それから類推すると、ゲーマの人たちは、自分の愛するキャラがそれっぽく語るのにはハマりまくりだろうなぁと思うわけです。……ただ、セリフとかの激萌えは、飽きるのも速いでしょうね。

筆者は個人的にスーパーミルクチャンが好きなのだけれど、ともかく、ゲーマー向け以外のいろんなスキンが作れるわけで、そうすると、いわゆるおたくな人だけじゃなく、いろんな人に使いやすい。なんかのアプリのイルカみたいな感じで、ユーザフレンドリーな汎用インターフェイスとしても使えるわけです。ダイアログボックスで「はい」「いいえ」より、友だちのキャラが出てきて「え?これホントに削除しちゃっていいの?3時間もかけて書いた原稿じゃん?(はい/いいえ)」とか聞いてくれたほうが、ある人々にとっては、たしかにパソコンが「使いやすく」なる。

だから、偽春菜は、単なる暇つぶしの埋め草じゃなく、マンマシン・インターフェイス全般の中間レイヤとしての可能性を秘めている。

まあ、ベクターからダウンロードできるフリーウェア(無料のもの)なので、とりあえず使ってみてください。解凍して出てくるharuna.exeがそれです。最新の状態に保つには、作者のページの下のほうにある「プログラム本体 - 最新パッチ」をダウンロード。それを解凍して、出てくるものを、haruna.exe を置いたフォルダに「すべて上書き」でコピーしちゃえばOK。最新パッチだけじゃ動きません。まず本体をダウンロードして、その本体に対してパッチを上書きする形になります。そして、パッチをあててからは、実行ファイルは、sakura.exe のほうになるようです。偽春菜のデフォルトの外見は、変えたいならスキン集を使っていくらでも変更できますし、絵が好きならスキンを自作することもできます(キャラを表示させずに吹き出しだけにするスキンもあるみたい。偽IE偽メモ帳)。また、しゃべる内容や表情についても、ある程度なら簡単なスクリプトで自分の好きに変えられます。

ところで

人工無脳の制作に関するメモで「発達・自閉症研究などで注目されている関連性理論」とかが使えるかも、という話が出てくるのは、わたしからみると、すごく自然だし、チャットボットと自閉症の類比について前にも書いたけど、「わたし」と「あなた」という代名詞を逆転させるアルゴリズムの問題(このページのALICEの項)は、まさにこの文脈にあるわけです。

「彼女たちは心を持っていないという話だが、ぼくはやっぱり持っていると思うんだけどなぁ。 ただそれを表現する術を持たないだけで。」なんてのを読むと(HM−12の項)、ゲームのなかの人格の話なのか、自閉症者の話なのか、だぶってくる。

もうひとつ、とっておきのお話。

Windows は、自分自身のことを Windows と呼ぶ(Windowsを終了してもよろしいですか?というふうに)。現状、これが「プログラムの自己言及」の標準だと思う。ところが、アストロロギアのヘルプ「親切な妖精」は、自分のことを「わたし」と呼ぶ。「分からないことがあったら右から3番めの 魔法のつえのボタン をクリックするか[F1]キーを押すと いつでもわたしを呼びだすことができます」というふうに……「F1でいつでもヘルプを呼び出せます」ではなく、「F1で、いつでもわたしを呼び出せます」とヘルプ自身が語る。――意識してやったわけじゃなく、なにげの文章だったのだが、このへんのパースペクティブは、ちょっとおもしろいと思ったりもした。

妖精現実内の関連ページソフト紹介:偽春菜

この記事のURL

テキスト版省パケ版XML版


コール爆破は米海軍側の防衛ミスでは?

2001年 1月10日
記事ID d10110

2 reports on Cole bombing due(CNN)|Aden bomb: Captain escapes charges(BBC):2000年10月12日にイエメンのアデン港に停泊中の米海軍の駆逐艦「コール」がゴムボートによる自爆テロにあい死傷者が出た事件で、米海軍は、コールの艦長や乗組員など関係者を処罰しないことに決定したもようです。

コールの側も定められた安全上の手続きを大幅に逸脱していた、という指摘が以前からあり、(艦長がまぬけだとか)いろいろと言われていましたが、それについて公式見解的なものが出るようです。CNNがやや詳しく報じています――

事件があった当時、コールは“第二種警戒態勢ブラボー”にあった。運用規定によると、この警戒態勢下では、デッキ上に複数の歩哨(ほしょう。見張り)を立てて小型船の接近を阻止し、燃料補給作業中の外部からの攻撃に厳重警戒することが定められている。今回まとめられた報告書によると、警戒態勢ブラボーでとられるべき62項目の警戒項目のうち、30項目が無視されていた。岸から離れた湾上に停泊しているので警戒は必要ないという油断があったためという。具体的には、

……など、だそうです。最後の項目は、恐らく、警告を無視して(あるいは突然に)接近してくる相手に対しては、消火用の高圧放水で追い返す、という意味でしょう。コールのリッポルド(Lippold)艦長は、「消防用ホースなどばかばかしい。艦の防衛に役立たない」と考えていたそうです。その気持ちも、もっともで、なにせイージス艦。超高性能コンピュータの防空システムで、同時に百以上のミサイルが急速飛来しても、自動追尾の艦対空ミサイルで完全に迎撃(複数目標同時破壊)できると言われる、まさに鉄壁の「神の盾(アイギス:イージス)」なのに、消防用ホースで放水して艦を守る……なんて笑っちゃうほうが正気かもしれません。

けれど実際、ゴムボートにやられてしまった。放水ホースがあれば、簡単に追い払えたかもしれないのに……。

乗組員によると、小さなボートが近づいてくるのは見えたが、またゴミ回収かなんかの港湾作業船が来たのだろう、と思って気にもとめなかったそうです。だれひとりとして、この不明船の接近を止めようとする乗組員はいなかったとのこと。停船させようとしていれば攻撃を阻止できたかどうかは仮定の話だけれど、警備上の不備があったのは明白でしょう。いやしくも軍艦、そう簡単にやられて良いものか。

5kb

ゴムボートに撃沈されかけた最新鋭イージス艦「コール」

The Navy officer who conducted the Cole investigation, whose name has not been disclosed, found that the attack might have been prevented or minimized if Lippold had ensured that all preventive actions were taken.

But Natter disagreed, and Clark endorsed Natter's view, the senior Pentagon official said.

(コール事件の調査にあたったある士官は、もし艦長がきちんと予防措置をとっていれば、攻撃は阻止できたか、あるいは、被害を最小限にくいとめることができたかもしれない、と判断した――しかし上層部は、この見解を否定、艦長に責任なしとした。CNNより。写真=AP)

たしかにアメリカの威信にかかわることで、嘘でもホントでも犯人を「見つけ」て仕返ししないと気が済まない、というのは、あるかもしれません。「警官」が拳銃を机のうえに放置して盗まれたとして、「極悪拳銃強奪犯人」を始末するうえで、警官のほうに非があった、とは認めにくいでしょう……。

BBCやCNNは報じていませんが、一部のサイトで「黒幕はラディン氏に決定」みたいな報道が出てます。なんかアメリカのサイトが騒いでいるようです。それがまた雲をつかむような話で、「鍵をにぎるある容疑者が、自爆事件の犯人たちはオサマ・ビン・ラディン氏の命令によって行動したとわたしは信じると、「自白」した、と8日にイエメンの情報筋が明らかにした」のだそうで。

さらに妙な展開になってきたのは、ラディン氏が自分からアフガニスタンを去ると言い出した、という話。ご承知のように、アメリカ合衆国は、国連安保理の名を利用して、タリバン(アフガニスタンを実効的に統治している政権)に対しラディン氏を追放せよと圧力をかけてます(これはコールねたじゃなく、もともとアフリカの米大使館爆破事件がらみ)。タリバンたちが拒否すると「言うことを聞かないならこうだぞ」と称して、またもや国連の名であれこれする、という構図でした。ここで注意すべきは、アフガニスタンは何も悪いことを(少なくともこの文脈では)してなくて、アメリカが容疑者と称するラディン氏(ラディン氏はアフガン人ではない)がアフガニスタンに滞在しているだけだ、ということ。つまり、ラディン氏がアフガニスタンを出るなら、アメリカは、アフガニスタンに手を出す最大の口実を失う結果になるでしょう(今回の安保理制裁も名目上は、ラディン氏がらみ)。もちろん、その場合でも、ラディン氏はもうアフガニスタンにいないと知りながら「ラディン氏を隠している」を強弁してからむ手は残りますが……。

ラディン氏のアフガン出国希望については、複数のソースが伝えています。ひとつはパキスタン発、ひとつはインド発。ラディン氏はパレスティナの闘争にも参加意欲を示す一方で、「自分がここにいるとアフガニスタンのみなさんに迷惑をかけるから」とも漏らしているようです。タリバン側としては、ラディン氏の存在は「米ロのごり押しに断固抗議」のシンボルなので複雑な反応のようです。

いずれにせよ、もし本当にラディン氏がいなくなるなら、アフガン情勢が「動く」ことは必至です。

なお、CNNは「"Threat Condition Bravo" -- the second highest of four alert levels」と書いていますが、Alpha、Bravo、Charlie、Delta のデルタが最厳戒なので「the second lowest」の間違いでしょう。

この記事のURL

テキスト版省パケ版XML版



メールの宛先
Email us in Cantonese, English, Japanese, or Mandarin.

Cost 678.8 milliseconds.

inserted by FC2 system